盗賊と二号さん

10/16
前へ
/378ページ
次へ
「しゃーねえな。オラ、立てよ。アジトまで連れてけ」  ジェロムは盗賊を無理やり立たせて案内役に駆り立てる。  エルーシャにいくら言っても聞かないと諦めたようだ。 「グレン、あのひとたち、どこいくの?」   おんぶされたままのリュキアが半死の盗賊になぜか興味を示した。 「ああ、盗賊の仲間をやっつけに行くんだってよ」 「アレとおなじのが、ほかにもいっぱいいるの!?」  アレ呼ばわりとか何気に辛辣な幼女である。 「いるだろうけど……なんでそんなに食い気味なんだ?」 「グレン、わたしたちもいこう!」 「は?」  謎のテンションアップをしたリュキアに俺は困惑せざるを得ない。 「いや、行く理由がないんだが……」 「いきたい! いきたい!」  背中でグラインドして暴れるリュキア。おいおい、こんな聞き分けのない子だったか? 「……しょうがねえなぁ」  俺は根負けする形でエルーシャたちに同行を申し出ることにした。  まあ、車ってのは運転手の望む先へ運ぶものだし? 『……じゅるり』  耳元で聞こえた、御馳走を前にした舌なめずりのような音は気のせいだよな……?
/378ページ

最初のコメントを投稿しよう!

833人が本棚に入れています
本棚に追加