盗賊と二号さん

16/16
前へ
/373ページ
次へ
「くそっ、水魔法を使うやつがいるのか!」 「やべえ、矢のストックが切れそうだ!」 「切れるまで続けりゃなんとかなるだろ! もっと撃て!」 「弓での攻撃が収まったら我々も行きましょうか」 「馬鹿ばっかりで助かるぜ」  サラスとジェロムは前衛としてしばらく待機をするようだ。  エルーシャの魔法はそれだけ長持ちするということか。  ここは俺も魔法でどうにかしたいな。  このままでは魔法を得意とするエルフの名折れだ。  体当たりで一人ずつ倒してもいいが、あんまり轢き過ぎるのもな……。  トラックって、人を轢くためのものじゃないし。 「なあ、なんか簡単な攻撃の呪文を教えてくれないか?」  魔法を展開しているエルーシャに背後から訊ねてみる。 「えぇ? グレンっちってエルフじゃないの? 魔法ならわたしより詳しいでしょ?」 「俺は肉体派のエルフだから呪文を暗記するのは苦手なんだよ」  グレンっちってなんだろう、っていうのは考えないことにした。 「ぷふっ、肉体派ってなにそれー! おもしろーい!」  大爆笑されたが、不思議とあまり不快には感じなかった。  天性の人懐っこさが彼女にはあるんだろうな。羨ましい才能だ。 「なら、一緒に唱えてみる? わたしの後に続けば間違えないよね。そろそろ弓の攻撃もやみそうだし」 「そうしてもらえると助かる」  やがて、すべての矢を放ったのか盗賊たちの攻撃はぴたりと止まった。  エルーシャは水のドームを解除すると、俺に目で合図を送った。 「じゃあ、行くよー」 「おう」 『『tellubretaw///……○×▲%$§¶…………』』  追って唱える呪文によって魔力が渦巻くのを感じる。いいぞ、いい感じだ。すごいのをお見舞いしてやるぜ! ちなみにこの呪文、エルフの里で習ったやつだった。テスト前に暗記して、終了後に即忘れたやつ。 「「『ウォーターバレット!!!!』」」  そして次の瞬間、激しい轟音とともに盗賊団は岩場ごと壊滅した。
/373ページ

最初のコメントを投稿しよう!

831人が本棚に入れています
本棚に追加