王都と門番

2/15
831人が本棚に入れています
本棚に追加
/373ページ
 周囲はおびただしい量の水で浸されていた。  エルーシャと同時に放った俺の『ウォーターバレット』は力を込め過ぎたのか、とてつもない破壊力で盗賊団を一掃した。  岩場は崩壊し、吹き飛ばされて岩に叩きつけられた盗賊たちは肉片となった。崩れた岩の下敷きになって潰された者もいた。  運よく生き残った連中も強く体を打ち付けて全員気絶していた。  威力を理解せず放った俺の魔法は一瞬で場に惨劇をもたらしてしまった。 「マジか……」  こちらの消耗がゼロで制圧できたのはよかったのだろうが、これはやりすぎたな。女神様からもらった、このちょっとばかしの魔法の才能とやらはピーキーすぎる。うっかり身内を巻き込んだら洒落にならんぞ。外に出てから里で魔法の勉強を疎かにしていたツケがちょくちょく回ってきている。 「すごいね、グレンっち! 身体強化の魔法もすごかったけど、属性魔法も規格外だよッ! さすがエルフ! あれってどうやったの!?」 「お、おう……」  エルーシャが俺の腕を掴んで興奮気味に揺さ振ってくる。なんだかんだ、魔法についての探求心もあるんだな。  彼女は食い気だけで構成された人間じゃなかったようだ。  つか、木を薙ぎ倒したのは魔法の力だと思われてるのか。  ルドルフも勘違いしてたっけ。  規格外な現象は大抵エルフの魔法だからで通る世界。ちょろいぜ。エルフでよかった。おかげで心置きなくトラックができる。同族には通用しないだろうけど。王都でジンジャーに会ったら余計なことを言わないよう口止めしとこう。 「これで肉体派か……エルフの魔法は底が知れねえぜ」 「おかげで楽ができましたが、とてつもないですね……」   戦わずに済んだジェロムとサラスは半ば引いていた。  おおう、エルフへの誤解を生み出しちまった。すまん、同胞たちよ。
/373ページ

最初のコメントを投稿しよう!