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「エルぅー、ばいばーい!」
「リュキア、またねー!」
無邪気な声を掛け合って手を振りあう少女と幼女。
俺もサラスやジェロムに軽く会釈をして別れを済ませ、王都への道を辿る。
予定外の時間を食ったが、こういう一期一会も旅の醍醐味だ。
また会えるといいな。
「じゃあ、行くぞ、リュキア」
「うん!」
背中に乗ったリュキア。
シートベルトがないから事故らないようにしなければ。
ただしスピードは落とさない。
せっかく速度制限がないんだから、そこは好きに走りたいじゃんね。
幼女を背に乗せ、俺は王都を目指した。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「特に語るべきこともなく王都に着いたぞ!」
「……どうしたの?」
リュキアが『何言ってんだ? こいつ』という感じで言った。
ほら一応、言っておかないとね。どこにいるのかわからなくなりそうだろ?
俺たちは王都の入場待ちをする列の最後尾にいそいそと並ぶ。
王都には東西南北に門があり、入るにはそのいずれかで入場審査を受けなければならない。
時刻は夕方付近。なんとか完全に日が沈み切る前に到着することができたな。
「ふむ、ここが王都ヴェルファイアか……」
順番待ちをしながら俺は王都を取り囲む巨大な外壁を見上げる。
今更だが、この国はトゥユーティタ王国という。
そして、そのトゥユーティタ王国の王都がここヴェルファイアである。
「すごーい! たかーい!」
有事には外敵から王都を守る砦となる壁を見てはしゃぐリュキア。
ふふ、無邪気よのう。
前世にあった高層ビルと比べたら驚くほどの高さではないが、これだけ大きな壁を前にすると圧倒されるよな。
「リュキアはデカい建造物を見るのは初めてか?」
「ううん? まえにもみたことあるよ?」
キョトンした顔で答えられた。
なんだよ、それ。
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