王都と門番

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 門番の青年は書状に目を通すと、敵対心のこもった表情を向けてきた。  俺は思わず間の抜けた声を上げてしまう。 「なぜエルフがレグルお嬢様の名前で書かれた家紋入りの書状を持っている?」 「いや、それは……」 「怪しいな……さては貴様、書状を捏造したな!」  門番は俺の説明に言葉を被せてシャットアウトすると、目を吊り上げて凄んできた。  でえ、ええ~。そういう面倒臭い感じですかぁ? なんでそうなるの? 「貴族の証文を偽造することは情状酌量の余地なく重罪だぞ! この下賤なエルフめ!」  門番の青年は口から唾を飛ばしながら恫喝し、書状を地面に叩きつけた。 「…………」  レグル嬢、話が違うじゃんよ。この紙を見せれば大丈夫って言ってたじゃん。余計ややこしくなってるんだけど? 「ねーグレン? まだ?」 「ああ、もうちょっと待ってな」  俺はリュキアを宥め、門番の誤解を解こうとする。きっとどこかに行き違いがあるはずだ。 「ちゃんと御令嬢本人からもらったんだって。ニッサンの町で別れたエルフのグレンだよ。聞いていないか? もう彼女は帰ってるんだろ?」 「貴様など知らんし、どこのどいつとも知れない馬の骨にお嬢様が在宅しておられるかを教えるわけにいかん。そもそも、どこで伯爵家の御令嬢であるお嬢様がエルフなんかと関わり合いになるというのだ? そこがまずありえないだろう。上手くやりたいのだったらもう少しマシな嘘を考えるべきだったな!」  青年門番は取り付く島もなく鼻を鳴らして笑った。この野郎……。  さっきから黙って聞いてりゃ、下賤だとかエルフなんかとか、エルフを見下したようなことばっか言いやがって……。  主を守るために土下座までしてきた女騎士と同じ家に仕える者とは思えない。  隊長やデリック君たちにあった謙虚さがこいつにはまったくないようだ。  俺はこいつの気に障ることを何かしたのか……?   なんでこんなに喧嘩腰なんだ。
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