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「あのさ、この家の門番は書状を持って訪ねてきた客をいちいち疑ってかかるのか?」
いい加減面倒臭い。俺の口調も多少ぶっきらぼうになる。
「ふふん、まあ普通のやつなら通していただろう。だがオレは他の連中とは違う。敵を見分ける嗅覚っていうのかな……そういう野生の勘に優れているんだ……」
ニタァと鼻の下を擦って笑う門番。おいおい、完全に浸ってるぞ。自分を有能だと勘違いして世界に入り込んでしまっている。もしかして気に入る気に入らないとかじゃなくて、こいつがアホなだけだったのか?
「もういい。話にならないから、とりあえず御令嬢をここに直接呼んでくれ。もしくはデリック君とか、女騎士……ええとエヴァンジェリン? とか、隊長とか」
「ほざけ! お嬢様は先ほど帰られたばかりでお疲れだ! 大体、敵対貴族の暗殺者を主君筋の人間に会わせるわけないだろう!」
オイいぃ、お嬢様のいるいない言っちゃってるぞぉ! さっき教えるわけにいかんって言ってただろうが!
しかもいつの間にか俺は他家の放った暗殺者に仕立て上げられていた。
「貴様なぞ、デリック様やエヴァンジェリン様、隊長殿が出るまでもない!」
とうとう青年は所持していた槍の先端を俺のほうに向け、戦闘態勢に入ってしまった。
まいっちまうぜ。
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