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「鍛えた肉体なら俺だって負ける気はないぞ――」
俺は息を整え、丹田に力を入れる。俺はエルフでありながらトラックでもある。
人を運ぶため、野山を駆け巡り、幼き日々をトレーニングに費やしてきたのだ。
レグル嬢の家の人間ならうっかり撥ね飛ばして殺してはいけないだろう。
スピードは抑え気味で行こう……。
「ふしっ!」
バゴォォォォォン――ッ!!!!
速度がフルスロットルじゃなかったせいか。
それとも青年門番の反射神経がすごかったのか。
「どわあああぁああぁぁっ――!?」
俺は叫びながら門をぶち壊していた。
突撃は寸前で躱され、俺は停止の加減を制御できず、テックアート家を守る鉄の門にぶつかってしまった。
門の柵はひしゃげて粉砕。
なおも勢いは止まらず、俺は敷地内をゴロゴロ転がっていく。
くっ、うっかりダイナミック来訪してしまった。
服についた埃を払い落としながら立ち上がって周りを見る。
この家、庭広いな。レンガが敷き詰められた庭園。
噴水までついてるとか金持ち感すごいわ。
「な、なんだ貴様は……!? 鋼鉄の門を突き破っただと……」
「お前が避けたせいで門を壊しちゃっただろうが!」
狼狽する青年門番に一喝。これ、俺のせいになんのかな。後から請求されたりしないよな。
謝りはするけど賠償はできないぞ。ない袖は振れぬ。
絡まれた結果なんだから、この門番の給料から引いてくれることを願う。
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