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「おいコラ! 貴様、何をやっておるかぁ――ッ!」
そう言って叫んで走ってきた中年の騎士。
白髪の混じった男性騎士はひどく慌てたように俺たちの間に割って入った。
「あっ……」
中年の騎士はぶっ壊された門を見て口を半開きにする。
いや、なんかすいません。
でもわざとじゃなかったんです。だってそいつが避けるから!
「ディ、ディーゼル! 一体何が起こったのだ!」
「スタントンさん! 賊が攻めてきたんです! 見てください! このエルフは屋敷の門を魔法で壊して強引に侵入を図ろうとしたんです!」
門番の青年が早速チクリだす。この野郎、あることないこと言いやがって……。
それは魔法じゃねえよ!
いや、ここは冷静に行こう。冷静に状況を分析だ。
まず青年の名前がディーゼル、それで中年騎士のほうがスタントンというみたいだな。
やり取りを見た感じ、スタントンが上司にあたるようだ。
なら、スタントンを説得できればこの場は納められるはず。
「スタントンさん、一緒に戦ってください! あのエルフ、槍で刺しても死なないんですよ!」
中年騎士は青年門番の声を聞くと、ギギギと首だけを動かして信じられないものを見たような目で青年門番……ディーゼルの顔を見た。
「お前、このエルフを槍で刺したのか……?」
「ええ、なにせこいつ、お嬢様の名前で書かれた書状を偽装までしていましたからね。情状酌量の余地はないと判断しました」
「……そうか」
中年騎士、スタントンは神妙な顔で俯いた後、渋い表情で俺のほうにスタスタ歩いてきた。
俺は警戒して身構える。
腰に差したサーベルを抜いていないから敵意はなさそうだけど、念のためな。
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