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「グレン、さ、様……こうちゃだ、こうちゃだ、です」
良く晴れた日の昼下がり。テックアート邸に到着した翌日。
俺は中庭のテラスにて、従者としての修業を始めたゾフィーに紅茶を振る舞われていた。
洗練された動作でカップに注がれる琥珀色の液体。
整った容姿のダークエルフ少女が行う給仕は実に絵になっていると言えた。
きちっと執事服を着こなし、一挙一動も堂々としている。
とても見習いの従者とは思えない風格があった。
言葉遣いが若干怪しいのは仕方ない。エルフって基本敬語で話さないし。
ジンジャーも奴隷商で覚えさせられたから今は使えるっぽいけど、里にいた頃は話せなかった。
俺だって相手に慣れてくると自然とタメ口が出てくる。
まあ、そんな話は置いといて。
「ありがとな」
俺はカップを手に取り、香りを楽しみながら一口啜る。
本当は香りなんか興味なかったが、せっかく行儀よく入れてもらったわけだし。
こっちもそれっぽくしてあげたいじゃん?
「い、いかがでしょうか?」
「ああ、美味いな……」
素直に感じた感想が口から出る。
紅茶の味なんて大して詳しくない俺でも美味いと思えた。
俺の舌がよほどバカでなければ昨日のメイドさんにも負けてないはずだ。
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