831人が本棚に入れています
本棚に追加
/373ページ
くそ、厄介な決まり事を作りやがって。俺が大人になったらまずはこのガバガバな決まりを変えるとしよう。
「俺を捕まえたら奴隷商と落ち合うつもりだったんだろ? とりあえずその集合場所を教えろ」
何にしても問題を看過して暢気に旅をするわけにはいかない。俺の後には同世代のエルフたちが控えているのだ。
輩どもは潰したとはいえ、所詮は末端。
また新たな使い走りが雇われてやってくるとも限らない。これ以上の犠牲者を出さないためには本営を叩いておくしかないだろう。
「ぐっ、なんでそこまで話さなきゃ――」
俺は恐らく折れているだろう輩の肋骨付近をふにふに押した。
男は悲鳴を上げて脱糞した。
「こ、ここから一番近いニッサンの町ってこと以外は知らねえ……。引き渡しはお頭と幹部だけしか行かないんだっ……! 下っ端なオレは何にも聞かされてねえんだよぉ……」
先手を取るために頭を最初に潰したのは失敗だったようだ。今後の教訓としておこう。
「頼む……助けてくれ……回復魔法をかけてくれ。エルフならできるだろ?」
瀕死の輩は救いを求めて俺に手を伸ばす。
「すまん、俺って魔法は面倒くさいから全然呪文を覚えてねえんだよ」
「そ……んな……人で……なし……!」
俺の言葉を受けた男は悲壮な表情を浮かべ、無念そうに息を引き取った。……いや、意地悪で言ったんじゃなくてマジなんだよ。
ちょっとした擦り傷を治す初級魔法なら覚えてるんだけど。ここまでズタボロなやつを治せる高位回復は呪文が長くて無理。
「南無三……」
俺はくたばった輩どもに合掌した。次に生まれ変わるときは真っ当に生きろよ。
お勧めはトラックになることだ。
最初のコメントを投稿しよう!