831人が本棚に入れています
本棚に追加
/373ページ
「グ、グレン様ぁ……ぐぬぬぅ……!」
見送りに来てくれていたゾフィーは涙目だった。
そしてゾフィーは馬車ではしゃぐリュキアを恨めしそうに見つめていた。
建前上とはいえ、従者として俺についていくリュキアに思うところがあるようだった
「まあ、ほら。修行が終わればすぐこっちにこいよ。お前ならすぐ一人前になれるさ」
「は、はい! すぐに追いつくぞ……なのだ!」
ニッコリ笑顔になるゾフィー。
ちょろ……じゃない、彼女には笑顔が似合うな!
「グレン様、くれぐれも他の貴族の子弟とは揉め事を起こさないようにお願いします。もちろん何かあれば当家が全力で後ろ盾になりますが……。何事も起こらないに越したことはありませんから」
同じく見送りに来たレグル嬢が不安そうに言ってきた。
続いてディオス氏も、
「伯爵以下の相手ならテックアート家の名前を出すといい。それだけで直接的に何かを言ってくる相手は減るはずだよ」
……そんなに面倒な連中が多いのか、王立魔道学園には。
話しかける相手には注意しないといけないな。
「ムカついたからって殴ったらダメだよ? グレンのパンチって強いんだから。貧弱な貴族の坊ちゃんが受けたらパーンってなっちゃうよ」
ジンジャーがもっともなことを言う。
そうだな、喧嘩腰の相手は全力でスルーしよう。
俺の走行力なら逃げることも容易い。
「任せとけ、俺のスピードなら簡単に撒けるぜ」
「へ? 何の話ですか……」
きょとんとするレグル嬢にサムズアップして、俺は悠々と馬車へ向かった。
エヴァンジェリンや隊長、デリック君は仕事でこれなかったが、また会う機会もあるだろう。
そのときはいいお土産を持ってこれるといいな。
待ってろよ、奴隷商人の協力者。
俺がすべてを白日の下に晒してやる。
最初のコメントを投稿しよう!