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扉を開けて塔の中に入る。
塔の内部は意外にも埃はなく、掃除が隅々まで行き届いているようだった。
誰かが定期的に清掃を行なっているのかな。
「エルーシャ。才媛とやらはどこにいるんだ?」
少なくともこのフロアにはいない。
ここにあるのは物置っぽい部屋の扉と使われなくなった椅子や机の残骸だけである。
「ラルの研究室は一番上だよ。まあ、この塔は全部ラルの所有物だけどね」
才媛ラルキエリは生徒でありながら優れた魔術研究者でもあるため、学園から研究する場としてこの塔を丸々与えられているらしい。
よっぽど期待されてるんだな。
イチ生徒にそこまで特別待遇するなんて。
感心しつつ、俺はフロアの端にある階段を上ろうとする。
「あ、まっちまっち。わざわざ上らなくて大丈夫だから。こっちゃきんさいな」
それ、どこの方言?
謎の言葉を発しながらエルーシャは俺を物置と思われる扉の前まで引っ張っていく。
「ふふん、ちょっと見ててよ?」
エルーシャが扉の横に埋め込まれた石に触れると、
――ヴィイイィィン……。
うおっ? なんだなんだ?
チーン。
音がして、扉が左右に開いた。
「ほら、入って。これに乗れば上まで運んでくれるから」
開いた扉の向こうは三畳くらいの小部屋になっていた。
運んでくれるってまさか……。
これって、元の世界にあったエレベーター的なやつか?
物置かと思っていたらとんでもないハイテクだった。
「魔力を感知して動くんだよ。すごいよね?」
慣れた感じでエルーシャは入っていく。
いろんな意味で驚いた俺はリュキアと一緒に後に続いた。
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