才媛と塔

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「才媛に……ニゴー子爵令嬢……」  金髪のデカッ鼻は苦々しい表情で彼女らを睨んだ。 「君たちはエルフと結託して学園の方針とは異なる何かをやっているそうだな。いくらなんでも驕りが過ぎると思わないか?」  早速の喧嘩腰ですわ。  さあ、ラルキエリ先輩、エルーシャ先輩、言ってやってください! 「むむ、君は……」  ラルキエリが神妙そうな態度で眼鏡を上下させる。 「君は一体誰なのだよ?」  そして首を傾げてそう言った。 「ら、ラッセルだ! ラッセル・マーサカリィだよ! 寵児の名で呼ばれる僕をなぜ君が覚えていないッ!?」  ラルキエリに覚えられていなかったことに取り乱すデカっ鼻。  ほう、この金髪が噂の寵児というやつだったのか。 「ああ……すまないのだよ? いや、我輩、必要のないことには記憶を割かないようにしているのだよ? 研究者として覚えておくべき大事なことが他にあるのでね」  そういえばルドルフとネタにして笑ったのもこいつだったっけ。  なんでかなぁ、あんまり記憶に留めておく気になれないやつなんだよな。 「こ、これまで何度も顔を合わせているというのに君はッ……。もういい! 口で言っても聞くつもりがないなら決闘だ! 僕の創設した倶楽部のメンバーと、君たちの代表者をそれぞれ五人ずつ出して魔法による試合を行なおうじゃないか! 僕たちが勝てばその王立魔道学園の品格を落とす見苦しい研究をやめてもらおう!」 「……おい、見苦しい研究だと? 君は我輩の研究を見苦しいと抜かすのか……なのだよ?」  寵児ラッセルの言葉にラルキエリが珍しく怒気のこもった声を出す。  研究を馬鹿にするのは彼女の怒りのポイントだったらしい。
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