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寵児の名を持つラッセルに決闘を申し込まれ、それを数日後に控えたある日の朝。
俺は学園の敷地にある森の中を散歩していた。
ふう……たまにこういう緑のある場所を歩きたくなるんだよな……。
ひょっとしたらエルフの身体が本能的に自然を欲しているのかも。
この前は少し壊しちゃったけど。
木々の隙間から朝日が漏れる。
――チュンチュン……
――キシャアアアッ……
――グルルルルッ……
森の動物たちの声が聞こえた。
バキバキッ……。
ミシィミシィ……。
ズシンズシン……。
動物の蠢く音。生命がそこにいる証だ……。森に行くって言ったらメイドさんがあそこは危険な場所だとか、深淵がどうとか言ってたが、いたって普通の森じゃないか。むしろ大自然を間近に感じられて心地がよいくらいだ。まだ浅めの場所だというのに森の深くにいるような懐かしさを覚える。
鼻歌を歌いつつ、たまに飛び出してきた魔物を跳ね飛ばしながら森の散歩を続ける。
むむっ?
誰かが木のうろで丸くなって寝ているの発見した。
「くすんくすん……」
高い声。女性のようだ。泣いているのか? 近づいて顔を覗き込んでみる。
「あれっ、この人って基礎魔法の……」
そこにいたのは基礎魔法の授業を担当していた若い女教師であった。
なんでこんなとこにいるんだ?
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