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「あの、大丈夫ですか?」
普段は手入れの行き届いた艶やかな金髪はボサボサ。
頬や衣服には泥がこびりつき、化粧で塗りたくられていた顔もスッピンで若干幼く見える。
鼻が痛くなるくらい漂っていた香水の匂いもせず汗臭い。
いつも目障りなくらい身だしなみに気を遣っていた彼女がこんな姿で外にいるとは。
「おーい、大丈夫ですかー」
彼女にはあまりよい印象を持っていない。
だが、ここまで平時とかけ離れた状態でいればさすがに心配だ。
「ああ、幻聴が聞こえるよぉ……。こんなところに人の声がするわけないもんね……」
起き上がる体力もないのか、こちらを見ることもせずブツブツ……
そりゃエルフなので人じゃないですが。
ここまでボロボロなのは魔物に追いかけられたりしたのかな。
「ついにお迎えが来ちゃった……うふふ。わたし、ついに死んじゃったんだぁ……」
「おい……」
「ううん、でもそのために深淵の森に入ったんだもん、これでよかったんだよぅ……」
ホント、何があった。
これは穏やかじゃない。
そういえば前世の世界でも自殺の名所として森が人気だったとかそうでないとか。
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