833人が本棚に入れています
本棚に追加
◇◇◇◇◇
そして、いつも通り深夜遅くまで筋トレは続き――
「がんばれぇ……先生もがんばるからねえ……うっ……」
バタッ。
肉体的な疲労は回復魔法でリカバーしていたが、精神のほうが限界を迎えて女教師は倒れた。
彼女は倒れるまで……最後までトレーニングについていったのである。
「…………」
「…………」
「…………」
生徒たちは気迫に圧倒されて何も言えない様子だった。
彼らは徐々に量を増やしてきて今日のメニューまで至った。
女教師はそれを最初からこなしたのだ。
◇◇◇◇◇
回復魔法で癒せるのは肉体的なものに限られている。
精神的な疲れ――要するに脳の疲労まで取ることはできない。
よって、トレーニング終了後は最低限三時間の睡眠を取らせるようにしていた。
今はインターバルの時間帯。
生徒らが休息している間、俺たちはラルキエリの研究室に集合していた。
「うう……皆がなかなか心を開いてくれないよう……」
バテバテで床に寝転び、呻く女教師。
すっかり消沈しているな。
「信頼は得ることは難しいが失うのは容易い。失い続けて底を突き抜けたあなたの評価は易々と覆らないだろう……なのだよ?」
試験管を磨きながらラルキエリが呟く。
さり気に含蓄のあることを言うではないか。
「まあ、一日二日でどうにかなるもんじゃないよな」
とはいえ、今日の執念を見て彼らも少しは見直したと思う。
「ぐうぐう……」
俺の慰めが届いたのかどうか。
女教師は爆睡していた。
最初のコメントを投稿しよう!