信頼と挽回

8/12
前へ
/378ページ
次へ
◇◇◇◇◇  そして、いつも通り深夜遅くまで筋トレは続き―― 「がんばれぇ……先生もがんばるからねえ……うっ……」  バタッ。  肉体的な疲労は回復魔法でリカバーしていたが、精神のほうが限界を迎えて女教師は倒れた。  彼女は倒れるまで……最後までトレーニングについていったのである。 「…………」 「…………」 「…………」  生徒たちは気迫に圧倒されて何も言えない様子だった。  彼らは徐々に量を増やしてきて今日のメニューまで至った。  女教師はそれを最初からこなしたのだ。 ◇◇◇◇◇  回復魔法で癒せるのは肉体的なものに限られている。  精神的な疲れ――要するに脳の疲労まで取ることはできない。  よって、トレーニング終了後は最低限三時間の睡眠を取らせるようにしていた。  今はインターバルの時間帯。  生徒らが休息している間、俺たちはラルキエリの研究室に集合していた。 「うう……皆がなかなか心を開いてくれないよう……」  バテバテで床に寝転び、呻く女教師。  すっかり消沈しているな。 「信頼は得ることは難しいが失うのは容易い。失い続けて底を突き抜けたあなたの評価は易々と覆らないだろう……なのだよ?」  試験管を磨きながらラルキエリが呟く。  さり気に含蓄のあることを言うではないか。 「まあ、一日二日でどうにかなるもんじゃないよな」  とはいえ、今日の執念を見て彼らも少しは見直したと思う。 「ぐうぐう……」  俺の慰めが届いたのかどうか。  女教師は爆睡していた。
/378ページ

最初のコメントを投稿しよう!

833人が本棚に入れています
本棚に追加