信頼と挽回

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「…………」 「…………」 「…………」  ポーンたちは沈黙を貫いていた。  彼らには逆らって怒らせてはまずいという意識が働いているようだ。  口を閉ざして魔法実技の教師が離れていくのをただ耐えていた。 「こんな粗暴な真似を恥ずかしげもなくできるとは。落ちこぼれは心まで卑しいのだな?」  クククッと気味の悪い笑い声を上げる魔法実技の教師。  この前まではこれほどあからさまに馬鹿にしてこなかったのだが……。  ラッセルが筋トレ理論に真っ向から不快感を示したことで強く出てもいいと思ったのかね。  決闘に臨む前に彼らを精神的に潰されたらたまらない。  直接の暴力は働けないが少し黙らせるか。  俺がゆっくり立ち上がると、 「お、落ちこぼれなんてぇ、言っちゃダメなんだよぅ!?」  女教師が叫んだ。  え……ここであんたなの? 「むっ? 君は基礎魔法の……なぜ君が落ちこぼれたちと混じっている? しかもその恰好は……魔導士にあるまじき汗や泥に塗れて――」 「みんな頑張ってぇ? 頑張ってるんですよぉ!?」  ぷるぷる震えながら女教師は魔法実技の教師に詰め寄っていく。 「わたしもぉ? 昨日から参加してるケドォ! すっごくきつくて大変でぇ!」 「うわっ、なんだ!? なにをする!」 「これからなんですぅ! みんな、まだまだこれからなんですよぉ!?」  ぺちぺち。ばしばし。  女教師は魔法実技の教師を弱々しいパンチで叩いていく。
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