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「崇高な魔術を研究している私に基礎魔法のヘボ講師ごときが恥を……っ!」
怒りに任せて実技魔法の教師は手を振り上げる。
その手は言わずもがな。女教師を叩こうとしていた。
しかし、その手は途中で止まる。
「……!? 貴様ら……」
筋トレ受講者の生徒たちが女教師を取り囲むように集まって実技魔法の教師を睨んでいた。
一人ずつでは弱い立場でも、これだけ団結して寄れば脅威として映るのだろう。
「ぐぬぬ……」
無言の圧力に押し負けて魔法実技の教師は手を下ろす。
「いいか! 今度の決闘で君たちが敗れることがあれば、その時は君のことも理事長に報告して責任を追及してやるからな!」
捨て台詞を残して魔法実技の教師、ゼブルスは去って行った。
プライドの高い男だ。
いつか筋トレをやらせて改心させねば……。
「み、みんなぁ……」
生徒たちが自分を庇ってくれたことに気が付いた女教師は目をウルウルさせた。
だが、
「別にあんたのこと先生と認めたわけじゃないからね……勘違いしないでよ!」
「う、うん……そうだねぇ……」
女教師は昨日のラルキエリの言葉を思い返しているのだろうか。
目を伏せて寂しそうに頷いた。
「……でも、筋トレを一緒にする仲間だってことは認めてあげる」
「…………!」
ツインテ少女、それはツンデレというやつだな。
「よし、休憩も済んだし、次はサーキットの筋トレだ!」
「「「はい!」」」
俺の号令で動き出す生徒たち。
「うふふぅ? 疲れたらぁ、わたしがぁ、みんなに回復魔法かけてあげるんだよぉ?」
「だから、そのふざけた喋り方をどうにかしなさいよ!」
「ふぇえん……普通にぃ? してるんだよぅ?」
笑いに包まれる一同。
女教師は少しだけ、信頼を取り戻せたってことでいいのかね。
雨降って地固まる?
やはり筋トレは心を澄ませ、わだかまりを取るのだ。
けど、ドライブはもっといいぞ。
いつかみんなと青空の下を走ってみたいものだ。
そのためにはもっと鍛えてやらないと。
そんな感じで、ちょっとだけ人間関係に変化を加えながら時は過ぎ――
いよいよ、決闘の日がやって来た。
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