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三回戦。それは一回戦や二回戦とは真逆のワンサイドゲームになっていた。
「ふはは! ハムファイト家の長男である私が平民風情に後れをとると思ったか!」
「くっ……!」
見たままを言えば、ツインテ少女はハムファイトという生徒からボコボコにされていた。
上手く致命傷は避けているが、それでも軽くないダメージを続けざまに与えられている。
おかしい……。どうなっている? どこか捻ったのか?
ハムファイトに初撃を避けられたと思ったら、そこから一気に彼女の動きが悪くなった。
しかもその後に追撃をせず、相手から距離を取って様子見をするなんて……。
間を空けて呪文の構築に必要な時間を相手に与えるなど、遠距離からの攻撃手段を持たない彼女たちが一番取ってはいけない行動だ。
事前のミーティングでもそれは何度も確認していたはず。
「これは圧力を使われたかもしれんのだよ……」
「どういう意味だ?」
悔しそうに唇を噛みしめるラルキエリに訊ねる。
「どうもこうも、言葉の通りなのだよ? あのハムファイトとかいうやつが貴族の地位を使って彼女に抵抗しないよう迫ったのではないかという話なのだよ?」
「は? そんなのがアリなら貴族と平民は決闘なんてできないじゃねえか」
「普通だったらありえないのだよ? 伝統ある学園で、それもナイトレイン校長の御前で行われた決闘でイカサマなど前代未聞もいいところなのだよ?」
あのエルフ校長って権威ある存在なんだ……。
そんなすごい人なら異変を見抜いてたりしないだろうか。
僅かに期待して様子を窺う。
お、目が合った。微笑みながら手を振られた。ダメだな、こりゃ……。
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