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ラッセルの言葉に『おおっ!』と審判や女教師たちが声を上げた。
「ラルキエリ、どういうことだ?」
「彼は……寵児は精霊の寵愛を受けて力の祝福を得ているのだよ? 恐らく、周囲に漂っている精霊に当時の状況を訊ねるつもりなのだろうよ?」
精霊の祝福? よくわからんが、遡って事実究明ができるってことか?
なんだよそれ、すごいじゃねえか。
これですべてが明らかになるな、と思っていたところで異議を申し立てる者がいた。
「ま、待ってください! そんなことをする必要はないでしょう!」
必死に止めに入ったのは渦中の容疑者、ハムファイトだった。
「彼らは実力で負けたことを認めたくないだけなのです! 戯言など捨て置きましょう! ラッセル様は私の勝利を疑っておられるのですかっ!?」
「もちろん信じている。だからこそ下らぬ言いがかりはすっかり払っておいたほうがいい。君もあらぬ疑いをかけられたままでは気分が悪いだろう? 心配するな。君の無実は僕が証明してあげるよ」
ラッセルは優しく微笑んでハムファイトの肩に手を置く。
「え、ええ……はい……」
ハムファイトは青白い顔でガクガク震えだした。
もう半分答え合わせみたいなもんじゃねーか……。
ここまであからさまでも自信たっぷりなラッセルは何なの?
もしかして自分たちに都合のいい結果をでっちあげるつもりなのでは?
「精霊の言葉を歪めて騙ったとなれば、彼は精霊からの祝福を失うかもしれない……。そんなリスクを犯してまで事実を隠蔽するとは考えにくい。そこは信頼していいと思うのだよ?」
へえ、そういうもんなんだ。
じゃあ、ラッセルってもしかして……。
「というか、こういう話はエルフである君のほうが本来詳しいはずではないのかだよ?」
「…………」
そういや里の学校で習った気もしないではないね。
まあいいじゃないか。
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