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ラルキエリの天才性に感心していると、ランニングの列で先頭を走っていた金髪が駆け寄ってきた。
「やあやあ、グレン君じゃないか!」
ラッセルだった。
走っている集団はラッセル一派であった。
彼は決闘で敗北した後、なぜか取り巻きを連れて筋トレ理論の実験に積極的に参加するようになっていた。
「グレン君、今度一緒に食事でもしないかい? 女神様に選ばれた君が広めようとしている魔法の理論を僕はもっと知りたいんだ!」
汗に濡れた前髪を流しながらラッセルが微笑む。
ラッセルは決闘でブッ飛ばした後、気持ち悪いくらい友好的になった。最初は頭をぶつけたショックでおかしくなったかと思ったのだが、どうやら彼は俺が女神様に気に入られていたことを知ったようで、そこで何か感情の変化が起こったらしかった。
そういえば精霊とか神様に対してやたらリスペクトしてる感じだったもんな。
けど、筋トレは女神様と関係ないんだよなぁ……。
ま、侮辱だなんだとうるさく言わなくなったのは楽だし黙っておこう。
『いちにーさんしーとーらっくー! にーにーさんしーとーらっく!』
「ほ、ほら、もっと声出して走るんだぁ」
「スピードが遅くなっているのですよ!」
ポーンやフィーナたちには筋トレ理論の先輩ということで新参のラッセルや貴族生徒たちを指導する側に回ってもらっている。
ポーンは性格的に厳しくすることに抵抗があるみたいだが、身分に関係なくビシバシやれと言ってあるのでそのうち慣れるだろう。
「くっ、わたくしを負かした平民の男に命令されるなんて何という屈辱……でも彼の言葉に逆らえないッ……はあ……はあ……」
「ちっ、従者の女ごときが偉そうに指示を……けど、あの女に殴られたときの痛みを思い出すと胸がモヤモヤする……なんだこれは……」
一部の貴族生徒は悔しげな言葉とは裏腹にどこか喜んでいるような?
……気のせいかな。
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