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「自分はニッサンの町へ行ってしばらく滞在する予定でしたが……」
「ふむ。それなら馬車を使えばもうあと半日も経たずに到着できるでしょう。ぜひ我々と一緒に乗っていってくだされ」
レグル嬢と合わせてゴリラな隊長まで親切の押し売りをしてくる。
なんと迷惑な。俺は自分の足で走ることを最高の楽しみにして旅に出たというのに。
大体、半日って俺が本気で走ればもっと早く着くし。
「……お嬢様、それに隊長も。僭越ながら申し上げさせていただくと、グレン殿は恐らく馬車よりも早く移動できる手段を持ち合わせているはずです。無理強いはかえって無礼にあたるのではないでしょうか?」
ちらりと俺に視線を寄越しながらそれまで無言を貫いていた女騎士は言った。よくわかっているじゃねえかこの女騎士。
名前はなんだっけ……忘れたけど。でも、いいやつだ。俺が感謝を込めてにっこり微笑みかけるとサッと視線をそらされた。うん、失礼な奴だ。
「……そうですね。確かにあれだけの速力をもってすれば馬車などでは及びもつかないでしょうね。浅慮な物言いでした。ならば、気が向いたらで構いません。我々も今日の夕刻までには町に入る予定ですので、陽が落ちましたら領主の邸宅にまでお越しください。精一杯のもてなしができるように取り計らっておきますので」
レグル嬢は残念そうに言って、俺を見つめ、長いストレートの金髪を揺らした。
女騎士はクールな感じで目を伏せ、ゴリラな隊長は年長者らしい落ち着いた笑みを浮かべ、美形な脱糞騎士はやたらと白い歯を見せつけながらウィンクしてきた。
だけど彼らの下履きは汚れているのだ。なんとも締まらねえよなぁ。お漏らしだけに。
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