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「ふん!」
御令嬢が汚れた衣類を召し換えるために馬車に入ったのを見届けると、俺は頭の中身がオープン御開帳になって死んだ騎士に回復魔法を送ってみた。
だが、騎士の身体はうんともすんともいわなかった。
やはり死者の蘇生まではできないか……。
「無理か……」
余計な期待をさせないように御令嬢がいない隙を見計らってやってみたが、言わなくて正解だった。
「仕方ないですよ。本来なら全員死んでいたかもしれないんです。お嬢様を救っていただけで十分すぎるくらいです」
いつの間にか隣にはそこそこ美形な脱糞騎士が佇んでいた。ゴリラな隊長は馬車の入り口の前で番をしている。
「ええと、あんたは確か脱糞の……」
「はい、僕の名前はデリックと言います。よろしければお見知りおきを」
ああ、そうだ。そんな名前だったね。美形脱糞騎士のデリックは蘇生に失敗した俺を気遣うように声をかけてくれた。
糞漏らし呼ばわりしたのに爽やかな相好を崩さず丁寧に応対してくるあたり、このデリック君はいいやつっぽいな。
ちなみに彼はとっくに着替えを済ませている。
何を恥じらうものかという屋外でのフル脱衣は優男の風貌に似つかわしくない彼の訓練を積んだ戦士らしい野性味を感じさせて好感を持てた。
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