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冒険者ギルドは石造りでできた三階建てくらいの建物だった。
「…………」
ガヤガヤと激しく人が行き交うギルド内の光景。
その騒々しさに圧倒されて入り口で棒立ちになっている俺。
イカンぞ。田舎暮らしに長く浸り過ぎたせいで都会の文明的なスピードについていけなくなっている。
「あの……」
声をかけようと思っても冒険者たちは俺の言葉が届く前に足早に横切って目の前を通過していってしまう。
意気揚々と門を叩いたはいいが、早々にとてつもない困難にぶち当たっていた。
くっ……シティボーイだったあの頃を思い出せ。高層ビルが立ち並ぶ都会の街を俺はブイブイ走り回っていたじゃないか。
まあ、走っていたけどトラックだったんで誰かとコミュニケーションをとっていたわけじゃないんですけどね。
「…………」
ぽつねんと立ち尽くしたまま座りの悪い心地で前に踏み出せない。
所在ないとはこのことかと人混みの奔流を前にして俺は初めて実感した。
おかしいじゃないか。
なんで町の空気はゆったりしているのにギルド内はこんなにガヤガヤしてるんだよ。
町の忙しなさがこの建物の中に集約されているのではないか。
職員のいるカウンターはあれど、それも複数箇所あって各々に長蛇の列ができているせいで気軽に自分が並ぶべき場所を確かめることができない。
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