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ギルド内にいる連中は常連という空気をビンビンに漂わせて内輪で盛り上がっており、初見が図々しく声をかけられないバリアを張っていた。
いや、実際には張っているわけではないのだろう。だが俺にはそう感じられた。
閉鎖的な里に籠っていた弊害だ。限られた人間関係の中で完結していたから新たなコミュニティに飛び込んでいく社交性が未発達なのだ。
俺はこんなにも社交スキルが低かったのかと思い知らされて落胆した。
いくら前世の記憶があるとは言ってもトラックだったからなぁ。
ここら辺のコミュニケーション能力は外界に触れていくなかである程度養っていくしかない。
前途の多難さを感じた。
どうやらここは酒場も併設されているみたいだ。
注文を受け取っているウェイトレスの格好をした女性がちらほらと歩いていることからそのことを理解した。
その中で昼間からジョッキを片手に飲み交わしている連中と偶然にも目が合った。
「オイオイオーイ? 兄ちゃん、ギルドは初めてかい?」
すると、そのうちの一人が俺に近寄ってきて馴れ馴れしく声をかけてきた。
「ギルドの勝手がわからないんだろ? そんならオレが案内してやるよ」
話しかけてきたのはくすんだ金髪の男。彼は俺の状況を完全にお見通しだった。
俺が入り口で右往左往している様を見ていたのかもしれない。
オロオロしている醜態を観察されていたとか恥ずかしくてたまらんねぇ。
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