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「登録の手順とか割のいい仕事の見つけ方とか、いろいろ教えてやるよ。その代わり受付のほうまで荷物を運ぶのを手伝ってくれねえか?」
くすんだ金髪の男はテキパキとした手際で大きくて重量のある壺をぽいっと渡してきた。
「おお、結構重いな……」
ずっしりと両腕にかかる重みにバランス感覚が揺らぐ。
そして重さ以上に高さと幅のある壺を抱えていると視界が塞がれて目の前がよく見えない。
足元が確認できないのはどうにも拙い心地だ。
「受付まで持って行けばいいんだな?」
丁寧な口調で話してきた御令嬢には自然と敬語が出てしまっていたが、相手がチンピラ気味のやつなら畏まる必要はないだろう。
俺は豪気な運ちゃんの愛車だったのだ。この手の輩の相手はお手の物である。
「どうだい、重いだろ? 非力なエルフには運ぶのはきついんじゃねえか? その壺は高価な代物だから落とさないように丁寧に扱ってくれよ」
くすんだ金髪男は隣について歩きながらそう言った。
男は何も持っておらず、手ぶらだった。
手伝えというからにはお前も少なからず手を貸すべきではないのか?
丸投げというのはどうなのだろう。
親切心で話しかけてきた割に誠意のない男の対応に違和感を覚える。
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