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「…………」
まあ、ぶつかっただけだったが。
俺を凝視してくるスキンヘッドは気まずそうに言葉を失っていた。
俺の体重自体は平均的なものだが重心の座り具合はトラック相当なのだ。
そうでなければゴブリンやオークを跳ね飛ばすことなどできない。
したがって、これくらいのもので足を取られることはないのである。
「何か?」
「あ、いや。すまんかったな……」
スキンヘッドは小声で謝罪し、身を縮こまらせて再びテーブルに着いて酒をちびちびと飲み始めた。
この男、わざとだろうか?
もしそうなら度し難い悪ふざけだが。
人が壊れ物を取り扱っている最中にそんな狼藉を働くとはどういう魂胆があってのことだろう。
「ちっ」
俺が疑惑の視線をスキンヘッドに向けていると、くすんだ金髪男が舌打ちをした。
「え? なんて?」
「あっ、いや、なんでもねえぜ! おいこら、ハゲェ! 危ないだろうがや!」
聞き間違いかと疑問符を投げると、くすんだ金髪男はとってつけたように怒りを露わにしスキンヘッド男の襟首を掴んで怒鳴り始めるのだった。
「す、すまん……すまんかったって……」
…………。
なんだか茶番っぽいキナ臭さがうっすらと見え始めてきたなぁ……。
「おおっと失礼!」
それからまた数歩進むと、今度は大きな声を上げて正面からぶつかってくる眼帯の男が現れた。
そいつは俺の身体に弾き返されるとテーブルの角に頭をぶつけ、痛みに苦しんで床の上で転げ回った。
「…………」
くすんだ金髪の男は冷めた目でその眼帯男を見下ろしていた。何がしたかったんだこいつは……とそんな感じで。俺も同じような気持ちだった。
俺は呆れかえりながらそいつの横を通り過ぎた。
「ぐぎゃああぁっ!」
枝が折れるようなポキッという音が足元から聞こえた。
横たわっていた男が野太い悲鳴を上げる。
何気なく足元を見てみると俺は眼帯の男の足首を踏んでしまっていた。
恐る恐る足をどかしてみる。うわぁ……。
男の足首は前衛的な感じに湾曲していた。
ああ、やっちまったぜ。エルフの森の獣道をものともしないトラックの馬力で人間の脆い骨を踏み砕いてしまった。
俺が現行でやらかしてしまった所業にテヘペロしていると、くすんだ金髪の男はぬるっとしたスピード感で眼帯の男に駆け寄っていった。
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