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「おい、アンディ! なんてことだ! これはヒデェ! 折れているじゃねえか! ちくしょうめ!」
「ル、ルドルフ……。いてえよいてえよ……」
くすんだ金髪男は眼帯の男の手を取って大げさな調子で声を荒らげる。
怪我の具合からしたら大げさじゃないけど、なんか芝居がかってるんだよなぁ。
「このエルフ野郎! やってくれたな!」
くすんだ金髪男の怒鳴り声と足を押さえて呻く眼帯男の相乗効果で周囲の視線がこちらに集中する。
乱雑に散らかっていた喧噪が凝縮されたひっそりとしたざわめきに変貌を見せて俺たちの周辺で漂う。
くすんだ金髪男は先ほどまでのへらへらした態度から一転、俺を睨み付けてくる。
「エルフの兄ちゃんよぉ。この落とし前はどうつけてくれるんだ!? オオイ? ここは怪我に見合った慰謝料を払うのが筋だよなぁ!」
くすんだ金髪男は妙にイキイキとしながら凄んできた。
まるでやっと目論み通りに事が進んだと喜んでいるような振る舞い方だった。
もはや話しかけてきたときにちらつかせていた善人の陰は皆無である。
こちらの恫喝する姿がこの男の真の姿なのだろう。
「……えーと。おたくら知り合いだったの?」
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