チンピラと冒険者ギルド

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「あーあ。どうやら今回はあんたの負けみたいだね」  やんちゃそうな八重歯の少女がトコトコやってきてルドルフの肩にポンと手を置く。  そうそう、ついでにもうこんなことをするんじゃないよとそいつに言ってやれ。 「ほら、今回はダメでも次の獲物を見つければいいじゃん」  ……おい、そっちの方面で慰めるな。  獲物を見つけさせようとするな。  ネバーギブアップの精神は大事だが、この方面では発揮しちゃいけないだろ。  この女、ダメ男を育てるマシーンか。クズを甘やかすんじゃないよ。  ご主人の友達にもいたっけなぁ。  自分は風俗で働き、パチンコ狂いの男に貢いで『次は勝てるよ!』とか謎の励ましをしてる女の子が。 「ごめんねー、エルフのおにーさん」  少女は運転手がよくやるチョップの形で手の平を立て、ペロリと舌を出しながらウィンクを飛ばしてきた。  ……この子はそういうタイプじゃなさそうだな。  どちらかというと、アホな男を泳がせて道化のように踊る様を見て楽しんでるっぽい。  きっと悪女だ。悪い女だ。どちらにしてもロクでもないな。 「覚えてろよ……必ずお前から慰謝料をもぎ取ってやる……!」  女とは対照的にルドルフはギロリと怒りのこもった視線を力強くぶつけてくる。  お前は慰謝料大好きか。  なんなのだこいつらは……。人間の闇を体現して生きているような連中だな。  正直、二度と関わり合いになりたくない。  俺は社会の淀みたちから目を背け、身を翻して一人で受付へ向かった。
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