チンピラと冒険者ギルド

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―――――  どこが初心者向けのカウンターなのかわからなかったので俺は適当に真ん中を選んで進んでみる。  すると列を作っていた冒険者たちは類まれな一体感を出してモーセの十戒のように散って道を開けた。  なぜだ? このギルドでは初心者を優先する決まりになっているのだろうか。  それとも譲り合いの精神の権化が集まってるのかな? 正当な並び順を明け渡すのは優しさとはちょっと違うと思うぞ?  まあ、せっかく譲られたんだしここはフリーパスで行かせてもらうけど。 「ギルドに登録をしたいんですけど」 「ヒィ……!」  俺が要件を述べると受付のお姉さんは悲鳴を上げて椅子から転げ落ちた。  そしてそのまま業務をほっぽり出して後方の扉の向こうにある事務室へ逃げていった。 「…………」  俺のギルドへの登録は……? おいおい、真面目そうな人に見えたのに職務放棄か?  釈然とせず首を傾げていると背後から声が聞こえてくる。 『あいつ終わったな』『そりゃ逃げるぜ』『素直に金を払っておけばいいのに』  …………なんのこっちゃ。  振り向くと未練がましく視線を送ってきているルドルフ一味の姿が。  こいつらのせいかよ……。まだ俺に執着していたのか。  どれだけ粘着質なのだ。  構っても仕方ないと思い、俺は無視を決め込むことにする。  ルドルフはそれが癪に障ったのか、その辺の椅子を蹴り飛ばしていた。  俺には関係ない。関係ない。  ギャーテーギャーテーハーラーギャーテーハラソーギャーテーボージーソワカ……。  俺は無心を心がけて連中を意識の外に追いやった。
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