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「ところで領主様、大切なご相談があると言っておりましたが、彼らも一緒でよろしいので?」
御令嬢が領主に訊ねる。ふむ、領主が大事な話を始めようとしていたところに俺たちが来訪してしまったのか。
「まあ、構わないでしょう。……ルドルフ君も実際に見ればまた違う意見をだしてくれるかもしれんしな」
意見とはなんのことだろう。独り言のようにつけたした言葉に俺含め、ルドルフや御令嬢も疑問符を浮かべる。
「ジンジャー、こっちへおいで」
領主が手を叩くと部屋の隅に控えていた一人のメイドが前に出てきた。メイドの首には奴隷の証である首輪が嵌められていた。
メイドが頭に被っていたヴェールを脱ぐ。
領主以外の全員がハッと息を呑んだ。
ふわふわな亜麻色のロングヘアー。陶器のようにきめ細かい白い肌。
――そして種族の特徴を司る尖った耳。
メイドはフランス人形を彷彿とさせる可愛らしい容貌をしたエルフだった。
領主に促されたメイドは無言で会釈をする。
俺はそいつの顔に見覚えがあった。だが、そいつは俺と視線が合ってもまるで動じることはなかった。
大きなブルーの瞳は感情を失ったように光をなくしていた。
一体どんな目に合えばこんな人形みたいな空虚な表情をするようになるのだ。
「……知ってるやつか?」
俺の反応を見てルドルフがひっそりと訊ねてきた。
「ああ……」
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