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チンピラと徒手格闘
「ねー? やっぱりエルフ基準だと、あれくらいの回復魔法は当たり前にできちゃうもんなの?」
ギルドを出て歩いてしばらく、俺は馴れ馴れしい口調の女に話しかけられていた。
見ればルドルフ一派にいた女だった。
「にへへへっ」
ショートカットの茶髪を揺らし、八重歯を見せて少女は笑う。
こいつ、どの面下げて……。
なぜ追いかけてきたのか知らんが、こいつらのせいで俺のギルドデビューは最悪なものになったんだが?
むかつく笑顔だ。
こいつの属するクラスターを考えるとそういう感情しか沸かない。
「いやぁ、エルフのお兄さんはすごいねぇ。無詠唱であれだけの回復魔法は初めて見たよ」
「…………」
少女の格好はチューブトップとベストを羽織っただけ。スカートもうっかりすると下着が見えてしまいそうな短さ。
腹巻みたいな面積の服を着やがって。
慎ましい女性が多いエルフ里では絶対に見られない破廉恥な軽装である。
「……どうしてついてくるんだよ。仲間のところに帰って酒でも飲んでろよ」
「それでもいいんだけどね? ちょいーっと、お兄さんに個人的な興味が出ちゃってさ。ルドルフと同じくらい……ううん、それ以上の回復魔法なんてそう見ないからさぁ」
俺の迷惑そうな態度を汲み取らず、少女は軽いノリを崩さない。
それどころか品定めするような上目遣いで俺を見つめてくる。
エルフと比べると平べったく感じるが、人間にしては目鼻立ちのハッキリした端正な顔立ちだった。
きっと人間基準では結構な美人に入るのだろう。エルフ規格では及第点くらい。
彼女はくすんだ金髪に俺を監視するよう命令されたのか?
それとも田舎の男をからかってやろうというビッチ精神に基づく行動なのか?
彼女の腹の内側を推察するが、現時点で真意はまだ推し量れない。
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