消えない傷、消せない傷

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左眉下と唇の右上、右手親指と小指下、あと腰には昨年の事故の傷が残っている。 これは昨年の事なので生々しく思い出してしまう。 クリスマスの事だったので、私は街が浮かれだすと心が沈んでいくのを感じる。 イルミネーションを見に夫と出かけた私は横断歩道を歩行中、よそ見していた車に轢かれた。 フロントガラスに後頭部を打って、何メートルも飛んだそうだ。 顔面から地面に落ちた私は、血だらけで酷い有様だったという。 地面の冷たさ、寒気、とてつもない痛み、怒声、悲鳴、憐みの目、辺り一面自分の血、血、血。 家族の名前を呼びながら、私は死にたくないと何回も言ったそうだ。 前歯は折れ、首はやられ、後頭部を切り、全身を打撲し、顔や唇は何倍にも腫れ上がった。 我ながらよく死ななかったと思う。 そして、よくここまで治ったなと思う。 顔の腫れも引き今は傷が残っているだけで後遺症もほとんど無く、日常生活もそこまで不便はない。
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