プロローグ

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 耳を疑った。  「外国人が、なんで戦わないといけない!」  そう叫ぶと、昨日の議会で法改正されて、外国人でも、年齢が十八歳から五十五歳までの未婚者、または身寄りがない六十代までの成人男性で、この国に三年以上滞在した者は誰でも徴兵の義務を負わされると説明された。  「難民申請だとみなすね、お前は此処の人間! だから脱走兵だよ」  「そ、そんなバカな! こんなの世界で許されるわけがない!」  すると係員は、いきなり警棒で俺の肩を叩き、床にうつぶせに這い蹲らせると流暢な日本語で、「此処は俺の国だ! 好きにやらせてもらう!」と、脅してきた。  「くそ! 大使館だ! 大使館に電話させてくれ!」  そう言うと、係員は大声で笑ってきた。  「なんだって? 大使館? なにもわかってない、あんたは我が国に入国も出来ていないんだ。つまり存在していない。ノウ・ボディだ! 存在していない奴に人権はない!」  「そ、そんな無茶な!」  さらに抗議しようとしたら、脳天に警棒がぶつかってきて意識が遠くなった。
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