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考えれば理屈では、まだ俺はこの国に入国していない。パスポートにスタンプがない限り、法的になんの権利もない。なぜなら空港の別室というのは、どの国でもない。《ノウマンズ・ランド》だからだ。
アメリカ合衆国でも《永住権》を申請するだけで徴兵の義務を背負う。つまりその場所に居住して生活するだけでも、国は軍事的な奉仕を個人に要求することができるのだ。
おそらく、この国では《永住権》の問題が拡大解釈されて、こんな理不尽な要求を外国人に求められるように法改正したんだろう。もっとも完全に国際法違反だ。だが連中は『志願してきた!』と、嘘を言い通すに決まっている。
十八歳から三年以上滞在した外国人に兵役を課すとすると、これは留学生も狙い撃ちにした制度と考えていい。
つまり《人質》といった意味合いだ。
だいたい、この国の老人問題は深刻で、日本と同じように少子化で戦う人間の数が足らない。近隣諸国との領土問題で軋轢(あつれき)を生んでギクシャクしているが、まさか戦争が始まったわけではないだろうが……。
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