プロローグ

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 俺が担当している、この国がいい例で、国際法も完全無視、ルールは権力者が自分の都合で拡大解釈しておき、外国企業に対して嫌がらせのやり放題で、友好国との条約さえ守らない。  (この野郎! 日本からのODA(補助金)を返せ! 賄賂を返せ!)と、怒鳴りたくなるのも一度や二度じゃなく、このあいだは反日運動に参加した暴徒に襲われて、営業所が数カ所焼き討ちに遭うという体たらく。  それどころか支社長、店長クラスになれば、誘拐を恐れて自動車ではなく専用ヘリで移動しなくてはならない。  犯罪も桁外れに多く、得意先を回っている途中で強盗に身ぐるみ剥がされて、ノイローゼになった社員もいるくらいだ。  だから社員は単身赴任か独身者ばかり、家族団らんなんてもってのほか、一緒に住めば誘拐されて身代金をがっぽりやられる。  まさに命がけで、社員は生きた心地もしない毎日だ。  《とっとと、こんな国から撤退してほしい》というのが社員一同の本音だが、誰も社長になんにも言えない。ただ日々の業務を粛々とこなしていくだけだ。
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