プロローグ

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 どうも部下に仕事を丸投げして、狸寝入りしていたらしい。  (ちゃっかりしてるよな~)  部下の手柄は自分のもの、自分のミスは部下のミス――忌々しい気分になるが、現地人で固められた支店のトップなどこんなもの。諦め半分で資料を渡しておき、空港で入国手続きを済ませようと、パスポートを提示したら、なぜか入国を拒否された。  「なぜだ? 俺は日本のビジネスマンだ! 怪しい者じゃない!」  こう主張しても役人は聞き流して、「お前は我が国に入れない」と、告げるだけだ。  そして、いきなり警備員に両脇を抱えられて別室へ送られた。  不思議だった。なんで入国できないのか? 今までこの国の犯罪組織に加担したことはないし、カジノはおろかスナックに入ったことさえないのだ。接待はゴルフと一流店しか利用せず、ハニートラップなどの女を利用した産業スパイを用心して、現地の女性には絶対に手を出さなかった。  (なるべく危険のリスクを避けてきたのに)  入管の係員は俺の荷物を引っ掻き回し、両手をあげさせて、靴で蹴って足を広げさせた。
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