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「じゃあ、行ってくるっす」
ジラフが手をあげて、ハシゴを登っていった。
その後に、ラルゴやフェイユーなど、グループのほとんどのメンバーが続く。
「みんなどこに行くの?」
残ったシンが、残ったオレに尋ねた。
「女買いに行くんだよ」
オレの返答に対して、シンは何も言わずに顔を赤らめた。
白い肌はその下の血色をよく透かし見せる。
「昨日配給があっただろ。
女街のはずれじゃパンの一個で買える女もいるから、みんなそこに行くんだ。
まあ、ババアばかりだけどな。
シンもやりたいなら皆について行けよ」
シンはふるふると首を振った。
「シアンは行かないの?」
そう訊かれて、オレは頷く。
「ムラムラしないワケじゃないけどな。
だが、お世辞にも治安がいいとは言えないこの街じゃ、パン一個のエネルギーが生死を分ける場合だってある。
これから寒くもなってくるし、オレはパン一個を選ぶよ」
「うん」
シンが心持ち強く頷いた。
「それに、あんな安いインバイヤドじゃあ、病気をもらわないほうが不思議だ」
「病気?」
「痒くなったり膿でたりするぐらいならマシだが、死に至る病気も多い」
「みんな死ぬのが怖くないのかな?」
「“ 死ぬまで生きてよう ”って考えてるヤツばかりだからな」
「どういうこと?」
「ここじゃ、無意味に生き延びたいって願うやつはほとんどいない。
自分が死んじまうその日まで、できるだけ空腹を感じないように、寒くないように、性欲を満たして、そうやって生きてければいいって考えてるヤツばかりなんだ」
「シアンは違うの?」
そう訊くシンの眼差しには、どこか期待するような光が宿っていた。
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