北極星も眠る夜に

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■□ 外は日が暮れはじめていた。 下水道にいると、時間の感覚がおかしくなる。 そいつは変わらずそこにいた。 だだっ広い駐車場には照明がなく、剥き出しのコンクリートが真っ黒で、まるで夜の海のようだ。 新入りは素っ裸でしゃがみ込んでいた。 金色の柔らかそうな髪が、風に揺れていた。 オレの足音に気付いて顔をあげたそいつは、何か言おうとして口を開いたが、けっきょくまた顔を伏せて、膝を抱えていた腕に力を込めただけだった。 肌が白い。 青い瞳を飾るまつ毛が長かった。 一瞬女なのかと思った。 だがそうじゃなかった。 そいつは顔を伏せたまま口を開いた。 「僕……服とられて……。 何か着る物を……」 消え入りそうな声でそう言った。 オレは自分が着ていたジャンパーを投げてやった。 ジャンパーはそいつのすぐ近くに落ちた。 手を伸ばしてそれを取ると、着ることはせずに、そいつは腰に巻いて、下半身を隠した。 立ち上がったそいつの胸に膨らみはかった。 うっすらと肋骨が浮いてはいたが、オレたちの誰よりも血色は良かった。 「あ、ありがとう」 「名前は?」 女でなかったことに幾分ガッカリしながらもオレは訊いた。 「ガン・シンチェン」 「どこから来た?」 「第三区西」 身なりや栄養状態からみて、上の国の人間に違いないとは思ったが、異国人のような金の髪色が引っ掛かっていた。 この街では髪色も肌色も雑多にいるが、上の国に黒髪以外の人間がいるとは知らなかった。
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