北極星も眠る夜に

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■□ 「シン、足持て」 ジラフが言った。 シンは頷くと、おそるおそる死体の足首を持つ。 ボロボロで垢じみた、剥ぐ気にもなれないような服を着た中年の男だ。 顔のドス黒さは、たぶん生前もそれほど変わらなかっただろう。 「そんなんじゃ落としちまうって。 もっとしっかり脇腹で抱えるようにして持つんだよ」 死体の腋に手を入れるように抱えていたジラフが、いらいらした様子で言った。 シンはもう一度頷くと、死体の足をしっかりと脇腹に抱えた。 路上の死体を見つけたのが、“ブルームーン”のヤツでラッキーだった。 報告を受け、すぐにオレたちはそこに向かった。 用意したリヤカーに乗せると、ドクターのところに向かう。 見たところ、飢え死にではなさそうだ。 目だった外傷はなかったので、死因は病気か何かか。 脳さえ無事ならば、あとはどうでもいい。 「し、死体なんてどうするの?」 シンが訊いた。 下水道のねぐらに連れてきて二週間。 ブルームーンに馴染みはじめていたシンだが、この“仕事”は初めてだ。 ごろごろとリヤカーを引くのは、死体の発見者でもある、ラルゴ。 そのラルゴが振りかえって答えた。 「脳みそに電極を付けて、そいつの人生を取り出すのさ」 彼はのんびりと喋る。 性格のイメージのせいか その輪郭はどこかゆったりとした印象がある。 もちろん、家なしの少年たちに肥えるだけの栄養はないが。
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