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「つかオッサンなんでここに居ンの。」
うなだれる神崎を前に、武藤は無表情でそう言った。
「あ?あぁ…谷口先生が真っ青な顔して職員室駆け込んできてさぁ、怖いお兄さんで武藤が怖いお兄さんで血まみれで~…みたいなこと言ってたから、来た。」
「あのおっぱい先生が?現場みてたわけ?」
「そうらしいよ~?…お前顔以外怪我ねェのか?」
武藤の話を軽く受け流しながら、怪我について聞きだした神崎。
「…ねェな。」
「嘘こけ。仕草見てりゃ分かんだよ。服脱げよどうせその状態だと顔ばっか目いって身体手当てしてもらってねェんだろ?」
「大丈夫だって…!オッサンが気にすることじゃねェから!」
武藤は珍しく暴言を吐くこともなく、暴力を振るうこともなく純粋に嫌がっているようだった。
そんな武藤に神崎の一言が突き刺さった。
「うるせェなぁ~…誘ってんのか。」
神崎は感情のこもっていない声で、
冷ややかにそう言ったのだ。
武藤の弱点を確実に得ている発言だった。
そしてその言葉に、武藤は神崎の予想を裏切るような反応を示した。
「おま…っ…うわっ…!」
武藤は神崎の頬に蹴りを入れたのだ。
当然、神崎は避けたが。
しかし、それはあくまで予想の範囲内だった。
神崎が驚いた原因は別にあった。
「樹…?」
「見ンな…馬鹿野郎……。」
俯いた武藤の表情は、髪の毛で隠れて見えにくいが、蹴られそうになった際に神崎はしっかりと彼の表情を認識していた。
「お前泣いてんのか。」
神崎の言葉は武藤の心を抉った。
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