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  行き着いた場所は、高級タワーマンションの一室。   一通りの家具はそろっているが、生活感のない空間だ。たぶん普段誰かが住んでるわけではないんだろう。   凜乃は白い革張りのカウチソファに俺を座らせ、自分も隣に寄り添ってきた。   体をぴたりとくっつけ握った手に指をからめてくる。  「優しく、してくださいますか」  「凜乃を傷つけるなんてしたくない。でも、今日は約束できないかも…」   俺は凜乃の片頬を右手で優しく撫で、そのまま顎のラインをなぞって上を向かせた。  「余裕、なくなった」   だんだん凜乃の顔が近づいてきて、大きな瞳が閉じられる。   もう目前に凜乃のぷっくりとした唇がある。  うわうああ、待って! 待って待って!  いや待たなくてもいいんだけど、待って!  なんか展開が急すぎない? まだお互いの気持ちも確認してなくない?  こういうことは何度かデートを重ねてやっとたどり着く山場なんじゃないの?  予定してなかったから、まるで心の準備ができてないです…。  すぐ準備しないと…。一旦鎮まれ、俺の心!  うううむむむ。息苦しい。  準備って、こんなに苦しいもんだっけ…?  なんだろ、手足が動かない上に胸の辺りが締めつけられて呼吸ができ、ない…。 「すぐに歩から離れろ!」  遠くのほうで誰かの声がする。  これは、もしかして泰士郎?  こんないいとこで来られても困…、てか、く、苦しい…。  次の瞬間、戻りたくなかったリアルにまで一気に意識を持っていかれた。 「うう…」  覚醒してるはずなのに、さっきの息苦しさは収まるどころかもっと臨場感を増している。  無理に目をこじ開けると、すぐ目の前に何かが見えた。  部屋が暗い上にあまりに近いから認識できなかったけど、何度か瞬きするうちにそれが何かわかってしまった。  深羽飛の顔だ。
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