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さっき洗面所で見た紫の光が2つ、目の奥に浮かんでいたから。
表情はよく見えないが、見ないほうがいいだろうと俺の本能が警告してる。
「うわああぁぁ」
「なーんだ、お前のせいで獲物も起きちゃったじゃん。あーあ」
「いいから、歩から手を離せ、夢魔(むま)め」
むま?
なんだかよくわからないが、急に楽になり体が自由になった。
すぐに上半身を起こし首に手をやって自分の体の無事を確かめる。
部屋の電気が点けられ、辺りの様子がはっきりと見えた。
部活ジャージ姿の泰士郎が俺を守るように、目の前に立っている。
そして、部屋の中心くらいの位置に深羽飛。
深羽飛というか、深羽飛だったものというか。明らかに姿が人のそれじゃなかった。尻尾のようなものが生えており、あぐらをかいた姿勢で宙に浮いている。
マジで浮いてる? 何かの間違い? 何かって何?
「なんで俺が夢魔だってわかったの?」
「最近、歩の様子がおかしい上に、なんか怪しいやつ狙われてそうな雰囲気だったから。まさかと思ってもどってきたら、この状況だ」
「え、あの…? どういうこと?」
「馬鹿だろ、高篠。まあ、そんなとこも獲物としてはイイ感じだったんだけどね。目先の欲望に目がくらんで、危険に晒されてることにも気づかない辺り、最高にイイよ」
「深羽飛、お前…」
全く状況は飲み込めないけど、とりあえず俺はこいつに馬鹿にされてるってことだけはわかった。 俺のなけなしの純情を利用されたことがとても悔しい。
怒りを露わにしかけた俺を遮るように泰士郎が言い放つ。
「お前は許さない。歩を危険に晒した罰は受けてもらう」
「いや、罰とか言われても、まだ何も…」
「オレが来なければ、やるつもりだったはず」
「ま、まあ、それはそれじゃない?」
「問答無用」
泰士郎はそう言って大きく息を吸い込み、右の手のひらを広げて前に突き出す。
そしてその口から、驚くべき言葉を紡ぎ出した。
「マジカルミラクルカタルシスライトォ!」
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