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「ちょっとー! まだ何もしてないのにー!!」  白い光が一瞬部屋を包み込んで、そのまま消えていった。深羽飛だった夢魔を連れて。いや、夢魔だった深羽飛か?  泰士郎が放心状態の俺を振り返る。 「歩くん、大丈夫だった?」 「え、ああ…。てか、遠征はどうしたの? 夢魔って何? お前は何者? なんでカタルシスライトが使える!?」 「ちょっと待って、質問多いよ。ひとつずつ答えるからさ。…それと、さっきは何度も呼び捨てしてごめんね」  いや、そんなとこはどうでもいい。すでに呼び捨てだけじゃなく、色々と別人の領域だろうよ。 「遠征は無理矢理もどってきた。昨日の歩くんが危うくて心配になったから。次は、夢魔だっけ。夢魔って夢の中で人を襲う悪魔みたいなもんだよ。本来、男性型は女性を狙うんだけど、稀に男を狙う男性型もいるって話。ここは男子校だからね」  悪魔ってそこらへんにいるもんなの? そこからしてすでに俺の今まで生きてきた常識的なものを軽く粉砕してるんだけど。 「それと後半の2つについてだけど、ボクはね…」  泰士郎は頭をかきながら口ごもる。 「歩くんの守護天使、だよ」 「えう? あうあうあ…?」  もう理解不能な情報の連続で、口から出るものは言葉の体を成してない。  守護天使って、お前…。  これやっぱ、夢の続き? 頼む、そうだと言ってくれ…。 「ボクみたいなのが守護天使って、ちょっとアレだけどさ。現実は凜乃ちゃんみたいな子ばっかりじゃなくて、ごめんね」 「いや、そこを謝られても…」 「あのアニメはボクらの広報担当が一枚噛んでるんだけど、夢魔なんかに利用されるなんてね…」  ああ…。  何もかも、俺は嵌められていたってことなのか…。 「こうしていつも歩くんのこと守ってるから安心して。でも、守護だけだとつまんないからさ、高校生としてそれなりに楽しむことは大目に見てほしいな!」 「…そ、そうか。それはいいんじゃない、か」 「…ってことで、これからもよろしくね! 歩くん!」  泰士郎が見たこともないような満面の笑みでグーのポーズを決める。  これがもし夢でないとしたら、こっちのほうがよっぽど悪夢の始まりを告げるものだと俺は思った。
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