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本当は言いたくて言いたくてたまらない。思い切って言ってしまえたら、と夜通し悶々とする日もある。
何より苦しい瞬間は、クラスのオタどもが凜乃ちゃんについてわかったような口を利くとき。
柚香や他の守護天使推しらしく、凜乃ちゃんのことを激しくディスるような発言を繰り返されたら、もう…。
そんなとき、眼鏡の奥の俺の眼はそいつらを殺せそうな勢いで光っていただろう。いいないいな、お前らそんな風に大声でやっちまいナースの話が出来ていいな。ぐすん。
なんて、泣いてる場合ではない。
もう寝よう。そして凜乃ちゃんに会うんだ。
今日のフラグは完璧だか、ら…。
zzzzz。
「すっきりしないから、やっぱもう1回言うよ。おやすみ」
上のほうで何か聞こえた気がしたけど、気のせいか。
それとほぼ同時、頭が枕を突き抜けて落ちていくような感覚とともに意識が完全にフェードアウトした。
そして。
次の瞬間目を開けると、窓からさんさんと日光が降り注いでいた。どう見ても朝です。
がばっとベッドから身を起こす。
あれ? 凜乃ちゃんの夢を見なかった??
どういうことだ、何か間違えた? もしくは、まだ他に隠れたフラグでも存在するとか?
「おはよ。どうしたの、起き抜けに」
お化け屋敷の生首のように、泰士郎の逆さまの顔が上から覗きこんでいる。
おはよ、と力なくつぶやき、俺は引き続き考えを巡らす。
俺の様子が少し奇妙なのか、つぶらな目をまん丸にしている。
「昨日、ボクのおやすみも聞こえないくらい速攻寝てたけど、体調悪かったりする?」
ん、今なんつった?
ボクの「おやすみ」も聞こえないくらい、とか言わなかったか?
「お前さ、結局俺に『おやすみ』って言ったんだ?」
「うん、言わないとなんかすっきりしないかなって」
かなって、じゃないっつーの。
フラグが間違いだったわけじゃなく、またこいつに妨害されたってことだ。
こういうことは一度や二度じゃない。フラグの確認作業を進めてきたここひと月の間に、何度もあったことだ。同室なんだからしょうがないっちゃないんだけど。
ちなみに深羽飛の「おやすみ」を動画に撮って寝る前に再生してみたけど効果はなく、フラグは立てるには肉声が必須らしい。
とにかく泰士郎をどうにかしないと、凜乃ちゃんとどうにかなることは難しいってこった。
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