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「え?」
「ほら、ボクらが入る前になんかいわくがあったとかって、オリエンのとき聞いたじゃん」
その言葉で思い出したけど、たしかにそんなことを聞いた。
でも、オリエンのときの上級生は明らかに新入生を怖がらせようと話を盛ってる感じばかり印象に残ってる。
「ね、みうとって誰?」
「橘深羽飛だよ、D組の」
「聞いたことないな…。まあ、ボクの交友関係広くないからかも。ともかくさ、今日はもう寝ようよ」
「ああ…」
泰士郎は深羽飛のことを知らないのは意外だったけど、それよりも「219」は本当に空き部屋なんだろうか。
今、ノックして中を確認したわけじゃない。
俺が深羽飛の入った部屋を見間違えたことも考えられる。この時間、寮の廊下には小さなスポット照明しか点いてないのでかなり薄暗い。
それに、泰士郎の「219号室が空き部屋」という記憶がそもそも間違ってる可能性だって十分にあるわけで。
いずれにせよ。
俺の一番の悩みは、この後どうやって泰士郎の「おやすみ」をかわすかなんだけど…。
今日はもう逃れることはできないんだろうな。そう、だろうな…。
「歩くん、おやすみ」
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