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まるで天と地とを結ぶような一条の光の帯が見える。数えるのさえ無駄に思われるほど幾多の星があつまり、焔のごとく明るく闇を照らしている。「ここ」もまた「そこ」にある。「そこ」もまた「ここ」にある。だが地から見あげたのでは、それと気づくこともむずかしい。人はそれを「天の川」と呼ぶ。
「民は自らの星を地と呼び、地より見えるものを天と呼ぶ。だが、地もまた天の中にある」
太くひびく男の声が言った。
「我らから見れば彼らは天。彼らかれ見れば我らは天」
高くとおる女の声が言った。
「我らは互いに鏡に映し合う、虚と実、実と虚の間柄」
はじめの男の声が言った。
「だが、民の中にあって、それを伝えきた者の存在も危うい」
男の声と女の声がそろって言った。
するとそこに、べつの男の声が響いた。
「して、民の目覚めは?」
「目覚めかけては、眠り、眠りかけては、目覚め……」
はじめの男の声がそう言いかけた。すると女の声が、厭味まじりに、こう言った。
「むしろ、目覚めているときは眠り、眠っているときは目覚めているとでも言うべきもの」
「もはや彼(か)の星における生命の存続は風前の灯とあきらめるべきか」
あとから聞こえた男の声がそう自問してから、嘆息まじりにこう言った。
「我らが姉妹星のさだめは、民の手にゆだねるほかないであろうか」
「民は、こう申しております。神の手にゆだねるほかはなかろうと」
「愚かなこと」
「民をそう見さだめるのも、遠い日のことではなかろうと存じます」
女がそう言うのを聞いて、はじめに声を出した男が、きびしい覚悟を胸に秘めた物言いで、こう言った。
「いよいよそのときが訪れしおりこそ、『彼』を解き放つときかと存じます。民が忌み嫌い、地に縛りつけたと信じる彼……民の言葉でいうところの『悪魔(ルシファー)』を」
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