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朝になるとわたしのために雇われたお手伝いさんがカーテンを開け、トレイに載せた朝食を運んでくる。窓から差し込む朝日とコーヒーの香りは一日分の幸せをもたらす。
お手伝いさんがやってくる限りは、わたしはまだ見捨てられてないということだった。
わたしが一日のほとんどをベッドの上や庭の片隅で過ごしていることを両親にとがめられることはなかった。うちが資産家だということと、わたしがなにもしないでいることは、ほとんど関係がない、と思っている。
着飾って揚々と出かける妹をバルコニーからこっそりと見送り、妹の行く先を推測する。たまに妹の考えていることや、外出先であったことなどがふとわたしの心に届くことがあった。
なんて因果なのだろう。双子でなければよかったのに。
別々の人格とわかっていながら、わたしは妹につい嫉妬する。
わたしはさしずめこの屋敷に閉じこめられた「負」の固まりだった。わたしたちが二人でひとつならば、幸と不幸を半々に背負ったまっとうな人間であったのに、神様はわたしたちをふたつに分けてしまったのだ。
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