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妹がわたしの部屋に来るのは誰か会わせたい人がいる時だけだった。
夕食を片づけに来たお手伝いさんと一緒に妹はやってきた。
最近の流行りなのか、妹は妊婦服のようなウエスト周りがゆるい短めのワンピースをよく着ていた。初夏だというのにレギンスをあわせてはいているので本当に妊娠したのかと思った。
「明日、彼を連れてくるわ。わたしたち、結婚することになったから」
淡々と妹はいった。
「妊娠したの?」
「やめてよ」
そう言い捨て、妹はわたしを見下ろした。
「とにかく、いつもどおりでいいわ。どうせみんなと食事しないでしょ。彼には体調が悪いといっておくけど、今度こそお姉さんと会っておきたいっていうから、ここには来ると思う。服ぐらいは着ておいてね」
化粧もして身繕いしておけということだった。
妹はしばらく黙り、お手伝いさんが出て行くのを待っていた。
ふたりきりになると妹は巻き毛をいじりながらいった。
「わたしを裏切ったりしないでよね」
「どういう意味?」
「いつもおとなしいくせに、いざってときになってわたしの悪口をいわないでねってこと」
「そんな――そんなこと、するはずないじゃない」
やっとの思いで言い遂げると、妹は何か言いたげに口を開けたが、そのままわざとらしいため息をついて部屋から出て行った。
気が重いのは妹だけじゃない。
わたしだって妹の彼氏や友達と会うのが苦痛なのだ。
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