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私はケーキを焼いている。
火水木は基本的にやすみ。営業日は正午から店をひらいている。
売りきれたらまた焼く。そして18時に閉店する。
私のスポンジケーキは30分、パウンドケーキは40分で焼き上がる。ひとりで充分、くり返す。ホールケーキのデコレーション、チーズケーキの撹拌、溶かしバターやガナッシュクリームのための湯せんがけ、コンフィチュールのフルーツの下ごしらえを並行しながら焼いている。
焼きながら、聴いているものはいろいろ。焼きあがりそうな時、ハードコアを聴く。通常はマッキントッシュを使って合衆国ボストンか、どこかのハイウェイで流れているラジオを聴いている。
店中に音楽はきこえている。
どうして月曜日に営業するかというと、店内のメンテナンス日。焼く数がすくなくて、つとめて清掃している。
その時聴くのはハードコアか、妄想旅行にもってこいのゆるい南国の音楽。極端だ。極端がいい。
けれどいまだに何故ケーキを焼いているのかわからない。
火曜日は、お財布とレジ袋とナイフを持って、今はもう、私が誰だか認識できない母と、足のわるい父が座る車いすを押しながら散歩する。父はラジオを抱えている。お昼になると、そのまま3人でスーパーマーケットに行って、ハムと適当な野菜を買って、パン屋に寄って、そう、いろいろカットして、サンドイッチを拵える。雨ふりでも、暑くても寒くても、きっと3人はやめられない。
水曜日は映画の日。母がびっくりしないようなホラーでなければ、なんでも大丈夫だ。3人とも映画館がすきだから。
木曜日は、どうぶつ園かプラネタリウムか、お家で両親に本をよむ。
たぶん結構忙しい。笑。
けれどいまだに何故ケーキを焼いているのかわからない。
お店用に花を買う。
コスモスを買う。宇宙という名の花。
花言葉は、harmony: 調和。
私は自分のしていることがわからなくて、自分のしていることの意味もわからない。
私はフラストレーションに気付こうとしない、やっぱりフラストレーションがない。
いつか誰かにおやすみといわれてみたい。きっとしあわせはそんな感じだ。
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